都市の闇に潜む怪異「トラッシュマン」
執筆者: 舎捨 大 |
2026-02-02 22:30
2026年1月末日、人とトラッシュカンと融合したような姿の怪異、通称「トラッシュマン」の姿が捉えられた。
トラッシュカンに手足が生えたような、はたまたトラッシュカンが人間を取り込んだかのような不気味な姿のそれは、TwiX等のSNSを通じて、レギオン駐車場やピルボックス病院付近で目撃情報が相次いだ。
当時、記者としてTwiXをチェックしていた私は「どうせまたAI生成のフェイクか迷惑集団のいたずらだろう」と高を括り、さしたる興味を持っていなかった。
――が、私自身が直面したある事態により、考えを改めさせられることになる。
この出来事を信じるか信じないかはあなた次第だが、深夜の路地裏を歩く際は、くれぐれも注意を――。
その日は、取材等の仕事終わりに行きつけのバーに訪れていた。
馴染みのスタッフとの会話を肴にカクテルを嗜みつつ軽食を済ませ、午前3時頃に店を出る。
酔いが回り、足取りは少しふらついていたが、自宅までの道のりはいつものルートだ。
街灯の薄暗い光がアスファルトを照らす中、いつもの路地裏に差し掛かった。
そこは、飲食店の裏手で、ゴミコンテナが並ぶ場所。
普段はただのゴミ捨て場だが、この夜は違った。
突然、視界の端に異様な影が映った。
複数の人影が、街灯の下に集まっている。
最初は酔っぱらいのグループかと思ったが、近づくにつれ、それが普通の人間ではないことに気づいた。
体は人間のように二本足で立ち、腕をだらりと垂らしているが、上半身が異様に大きい。
そして寸毫の後、上半身が大きなトラッシュカンそのものであることに気づく。
「トラッシュマン」――TwiXで見た姿そのものだった。
心臓が激しく鳴り始めた。
私は慌てて近くのコンテナの陰に身を隠した。
息を潜め、スマホをそっと取り出し、恐る恐るシャッターを切る。
周囲は薄暗く、画面に映る彼らの姿は判然としないが、まるでゴミ箱から生まれた化け物のように見える。
5、6体はいただろうか。
街灯の光に寄り添うように、体を寄せ合い、何かを囁き合っているようだった。
何をしていたのか? それは今も謎だ。
ただ、耳に届く声は、奇妙なものだった。
「トラットラットラ…」という、笑い声ともつかない音。
くぐもった響きが、路地に反響する。人間の言葉ではない。
まるでゴミが擦れ合うようなノイズ。
集団で何かを計画しているのか、それとも何かの儀式か。
好奇心が恐怖を上回り、私はもう少し近づいてみようと思った。
コンテナの端から体を少しずらし、耳を澄ます。
しかし、その瞬間、足元で空き缶を蹴飛ばしてしまった。
カラン、という音が路地に響く。
トラッシュマンたちの動きが止まる。
ゆっくりと、こちらを向く。
トラッシュカンの上半身からは確認できない彼らの目が、私を捉えた気がした。
私は振り返る余裕もなく、路地を駆け出した。
後ろから、足音のようなものが追ってくる気配。
自宅のアパートまで全力疾走。
ドアを閉め、鍵をかけ、息を切らして床に崩れ落ちた。
スマホの写真を確認する手が震える。
そこには、確かにトラッシュマンの姿が写っていた。
結局この怪異の正体はなんだったのだろうか。
専門家に相談したが「アルコールの影響か、ストレスによる幻覚」と一笑に付された。
だが、私は見ている。知っている。あの声、あの姿は本物だ。
都市の闇に潜む「トラッシュマン」。
ゴミ箱の近くを避け、夜道は一人で歩かないこと。
あなたも、いつ遭遇するかわからない。