【路地裏ノ怪】身体に浮かぶメッセージ
執筆者: ウィム・スノート |
2026-03-08 01:11
みなさん、御機嫌よう。
久しぶりに筆を執った。
ずいぶんと暖炉と毛布の世話になっていたところに、面白い話が舞い込んできたんだ。
「人の身体に、文字が浮かび上がった」
冗談めいた噂話なら、ここまで真剣に調べる者はいなかっただろう。
だが、この話は、いくつもの点で “出来すぎて” いた。
以下に記すのは、信頼できる住民から伝え聞いた記録である。
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冬の冷気が街を覆い尽くしていたある日のこと、知人から不可思議な話が舞い込んできた。
話によれば、その奇妙な体験をした人物(仮にA氏とする)は日付が変わろうとする23時過ぎ、自身の体に異変を感じたという。
皮膚の内側からじわじわと何かが滲み出るような感覚。
次の瞬間、身体から文章とも数列ともつかない“文字”が浮かび上がってきた。
それはまるで、身体そのものを媒体にして、何者かが必死に訴えかけているかのようだったという。
恐怖に駆られたA氏は「そこに誰かいるのか」「お願いだから、やめてほしい」と周囲に向かって叫び続けたが、返ってくるのは静寂だけ。
人気のない夜気の中で、浮かび上がる文字だけが生々しく語りかけていた。
ほどなくして現象は嘘のように消え去り、A氏は心身ともに疲弊しきった状態で職場へ向かったそうだ。
だが、不可解な話はそれで終わらなかった。
後刻、知人とA氏がその体験について話し合っていたところ、ほぼ同時刻に“同じような体験”をしたという別の人物が現れたのである。
偶然にしては出来すぎている。
その場での情報共有を進めるにつれ、この現象は複数人に同時多発的に起きていた可能性が浮上した。
興味を抑えきれなくなった知人は、あるTwiXの投稿に目を留めた。
そこには、何者かからの不可思議なメッセージの存在をほのめかす内容が記されていたという。
偶然にも投稿者と面識のあった知人は、直接アポイントを取り、詳しい話を聞くことに成功した。
判明した共通点は、いずれも背筋を冷やすものだった。
一つ。
不思議な体験をした人々は、全員が牧場で過ごしている最中だったこと。
二つ。
現象が発生した時刻は、ほぼ完全に一致していたこと。
三つ。
体に浮かび上がった文字は判読できない部分も多いが、明らかに「何かを必死に訴えかけようとする」文脈を持っていたこと。
ここまでの調査を経て、もはや人の手の及ぶ話ではないと察した知人は、それ以降の追及をやめたそうだ。
しかし、これらの内容を自らの内に留めておくことを耐えられなかった知人は、私へ打ち明けることで折り合いをつけることにしたのだろう。
そして話を受け取った私は、知人が集めたこれらの状況を総合し、ある一つの仮定をたててみた。
今回の現象は、牧場という場所に縛り付けられた何者かの残留思念、あるいは超常的存在によるメッセージが、文字となって人の体に発現した超自然的現象――いわゆる「歪み」の一種だったのではないだろうか。
これ以上の調査を進めるすべを持たぬ私には真実を知る由もない。
だが、これもこの街を生きる一つの物語として、私のノートに書き留めておくことにしようと思う。
この街では、理由も正体も分からぬ怪異が、日常のすぐ隣に潜んでいる。
今回の件も、その氷山の一角に過ぎないのだろう。
次にその“招待”を受け取るのが、果たして誰なのか。
この街は、今日も静かに、異常を孕んだまま息づいている。
まだまだ、楽しませてくれそうだ。
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いかがだっただろうか。
あなたの恐怖、不思議、あるいは――勘違いかもしれない何か。
私、ウィム・スノートは、そんな話をこっそり集めています。
内容は問いません。
街で暮らす “わたしたち” に起こった、ありえないはずの出来事。
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